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大阪地方裁判所 昭和56年(ワ)6299号 判決

一 請求原因一の事実(原告が本件仮保護の権利の権利者であること)は当事者間に争いがない。右争いのない実用新案登録請求の範囲の記載、及び成立に争いのない甲第一号証によると、本件考案の構成要件は、請求原因二1のとおり分説するのが相当であり、本件考案が請求原因二2のとおりの作用効果を奏することについては当事者間に争いがない。

二 請求原因三のうち、被告が自転車用ヘツドランプを業として製造販売していることは当事者間に争いがない。

右製品について、原告は、別紙イ号物件説明書の四、構造の説明(一´)(b´)のうち「設けて装着したランプ体」とあるのを、「設け、上下方向へ変動し照射角度を変更できるように装着したランプ体」と訂正するほか、別紙イ号物件説明書記載のとおり表示すべきであると主張するのであるが、被告が現在製造販売している自転車用ヘツドランプであることについて争いのない検乙第一号証によると、被告が製造販売している自転車用ヘツドランプは、別紙イ号物件説明書記載のとおり表示するのが相当である(以下「被告製品」という)。

被告製品を右のとおり表示すべきものとすれば、被告製品の構成は、別紙イ号物件説明書四、構造の説明(一´)(a´)、(b´)、(二´)(a´)(b´)、(三´)、(四´)に記載のとおり分説するのが相当である。

三 そこで、被告製品が本件考案の技術的範囲に属するか否かについてみる。

被告製品の(一´)(a´)、(一´)(b´)、(二´)(a´)、(二´)(b´)、(三´)、(四´)の構成を、本件考案の(一)(a)、(一)(b)、(二)(a)、(二)(b)、(三)、(四)の構成要件と対比してみると、(一´)(a´)、(二´)(a´)、(二´)(b´)、(三´)、(四´)の構成は、本件考案の(一)(a)、(二)(a)、(二)(b)、(三)、(四)の構成要件をそれぞれ充足していることが明らかである。

次に、被告製品の(一´)(b´)の構成は、「電池ケース1´に突設する支持アーム3´に枢着し、支持アーム3´の先端部に四個の角柱突起17を並設し、一個の爪18を設けて装着したランプ体2´」であるのに対し、本件考案の構成要件(一)(b)は、「前記電池ケースに突設する支持アームに枢着し上下方向への首振り自在となしたランプ体」であるから、両者は明らかに文言上相違する。

原告は、右の相違を認めつつ、被告製品は爪18と角柱突起17との係合位置を変更することにより上下方向への首振りが可能であり、しかも構成要件(一)(b)が本件考案の主要な特徴となる部分でないから、被告製品が本件考案の構成要件を実質的に充足する、と主張する。

そこで、被告製品が右構成を採ることによる作用効果、並びに、本件考案の目的及び本件考案が(一)(b)の構成要件を採ることによる作用効果を対比検討する。

(一) 前掲検乙第一号証によると、被告製品が(一´)(b´)の構成を採ることにより、ランプ2´は、同ランプ体に設けた一個の爪18と、電池ケース1´に突設する支持アーム3´の先端部に並設した四個の角柱突起17の任意のV字状陥部とが係合する状態で支持アーム3´に枢着されており、そのためランプ体2´は、枢着されたままの状態では上下方向に首振り自在に動かし得ないこと、ランプ体2´の照射角度を変更するためには、一たんランプ体2´と支持アーム3´との枢着を外し、爪18と角柱突起17のV字状陥部との係合位置を変更した上、再びランプ体2´と支持アーム3´とを枢着し直さなければならないことが認められる。

(二) ところで、前掲甲第一号証により推認しうる、本件考案の明細書の考案の詳細な説明には、その目的として、「電池電源を内蔵するケースにランプ体を枢着し、これをハンドル部に取着するようにしてランプの照射角度及び点滅操作を手近にて容易に行い得るヘツドランプを提供せんとするものである。」との記載(本件考案の実用新案公報一欄二六行目ないし二九行目参照)があり、本件考案の構成要件(一)(b)は、右目的のうち、ランプの照射角度操作を手近にて容易に行い得る、との点を達成するために採られたものと認められる。更に、前同考案の詳細な説明には、本件考案の実施例のうち構成要件(一)(b)に対応する部分として、「ランプ体2は電池ケース1の前面に突出して設けられた一対の支持アーム3にビスを介して回動可能に取付けられ照射角度を調整できるように設けられている。具体的にはランプ本体の下部に偏平な連結部を設け、この連結部をアーム3間にて螺着し、ランプ本体を手動にて上下移動させて照射角度を調整するようにしている。」との記載(同公報一欄三二行目ないし二欄一行目参照)、また本件考案の作用効果として、「本考案は以上のようにしてなり、電池ケース1にランプ体2を照射角度調整が可能となすように設け、これを自転車のハンドルバーHとステムの突出し杆HNとを利用してハンドル部に取着したので、走行中の振動に対しても取着状態の安定が良く、しかも、ランプ照射角度の調整及び点滅操作を手近にて行なえ、また、取着操作は帯バンドの緊締にて行なえるので必要に応じて着脱することも出来るなどの効果がある。」との記載(同公報二欄二八行目ないし三六行目参照)のあることが認められる。

右の各記載に、前記争いのない請求原因二2の事実(本件考案の作用効果を合せ考慮すると、本件考案の主要な作用効果は、ランプの照射角度の調整及び点滅の操作を、自転車の停止中のみならず走行中においても手近にて容易に行えることであり、右のうち照射角度の調整の点は、本件考案が構成要件(一)(b)を採用することによつてはじめて達成可能であると認められる。

したがつて、構成要件(一)(b)は本件考案の必須かつ主要な構成要件の一つである、といわなければならない。

右(一)(二)で判示のとおり、被告製品は、構成(一´)(b´)を採ることにより、本件考案の構成要件(一)(b)がもたらす作用効果を奏し得ないのであるから、被告製品の構成(一´)(b´)は本件考案の構成要件(一)(b)を充足しない。

四 以上のとおりとすれば、被告製品は本件考案の技術的範囲に属しない、というほかなく、被告が被告製品を業として製造販売することはなんら原告の有する本件仮保護の権利を侵害するものではない。

よつて、原告の本訴請求は理由がないから、いずれもこれを棄却する。

〔編註〕本件における請求の原因は左のとおりである。

一 原告は、次の出願公告にかかる権利(以下「本件仮保護の権利」といい、その考案を「本件考案」という)の権利者である。

考案の名称 自転車用ヘツドランプ

出願 昭和五二年一一月二二日(実願昭五二―一五七二一三)

公告 昭和五六年五月二一日(実公昭五六―二一六六三)

実用新案登録請求の範囲

「電池電源を内蔵し、電気的接続を断続する装置を備える電池ケースと、前記電池ケースに突設する支持アームに枢着し上下方向への首振りを自在となしたランプ体とで構成するヘツドランプにおいて、該電池ケースの底部にハンドルを接当する脚片と、ステムの突出し杆に接当する座体とを弾性体で設け、且つ、電池ケースをステム突出し杆部にて縛着する帯バンドを装備し、前記ヘツドランプをハンドル部に取着したことを特徴とする自転車用ヘツドランプ」

二 本件考案の構成要件及び作用効果は次のとおりである。

1 構成要件

(一)(a) 電池電源を内蔵し、電気的接続を断続する装置を備える電池ケースと、

(b) 前記電池ケースに突設する支持アームに枢着し上下方向への首振り自在となしたランプ体とで構成するヘツドランプにおいて、

(二) 該電池ケースの底部に、

(a) ハンドルに接当する脚片と

(b) ステムの突出し杆に接当する座体とを弾性体で設け、

(三) 電池ケースをステム突出し杆部にて縛着する帯バンドを装備し、

(四) 前記ヘツドランプをハンドル部に取着できるようにしたことを特徴とする自転車用ヘツドランプ。

2 作用効果

(一) 合成樹脂からなる全体として箱形に形成されている電池ケース1に、乾電池E(鎖線で示す)を収納し、電池ケース1の方面に突出して設けられた一対の支持アーム3に、ビスを介して回動可能に取付けられ照射角度を調整できるように枢着され電球を内装備したランプ体2と、その電球及びソケツト(図示されていない)に導いて形成されている通電路の開閉操作をなすスライドスイツチ7と、電池Eとが電気的に接続しているので、スライドスイツチ7を操作してランプの点滅をすることができる。

(二) 電池ケース1の底部に、ゴム製などの弾性体からなる脚片8・8と座体9とが設けられ、自転車のハンドルHの二箇所に脚片8・8を接当し、自転車のステムの突出し杆HN部の一箇所に座体9を接当し、計三箇所に接当し、帯バンド4で突出し杆HN部を巻き、帯バンド4の一端を帯バンド金具11に挿入し縛着して緊締することができ、自転車の走行中の振動に対し緩むことなく取着状態が安定に保たれ、必要に応じて帯バンドを緩めて着脱することができる。

(三) 本件考案の自転車用ヘツドランプが自転車のハンドルHとステムの突出し杆HN部に縛着されているので、自転車の走行中でもランプ照射角度の調整及び点滅操作を手近にて行うことができる。

三 被告は、別紙イ号物件説明書記載の自転車用ヘツドランプ(但し、同説明書の四、構造の説明(b´)中、「設けて装着したランプ体」とある部分を、「設け、上下方向へ変動し照射角度を変更できるように装着したランプ体」と訂正するほかは、別紙イ号物件説明書記載のとおりのものが原告主張の被告製品である)(以下「イ号物件」という)を業として製造販売し、製造のための金型、販売のためのカタログを占有し、イ号物件の完成品及び仕掛品を占有している。

四 イ号物件は次の構成及び作用効果を有する。

1 構成

(一´) 電池ケース1´は一・五ボルトの乾電池Eを二個収納し、乾電池Eと電池接点14と電池接片15とスライドスイツチ7´と電気的接続を断続する装置を備えていること。

(二´) ランプ体2´は、電池ケース1´に突設されている支持アーム3´に枢着され、上下方向に枢着軸の廻りを回動して上下方向へ移動し、所望の照射角度の位置で四個の角柱突起17のうちの一個と爪18と係合して装着され、角柱突起17のうちの一個の選択位置を変更して係合し照射角度を変更して装着することができること。

(三´) 脚片8´・8´と座体9´とは、共に軟質塩化ビニールで作られ電池ケース1´の底部に設けられ、脚片8´・8´がハンドルHに、座体9´がステム突出し杆HNにそれぞれ接当する位置であること。

(四´) 帯バンド4´は、電池ケース1´をステム突出し杆HNに縛着するように電池ケース1´に装備してあること。

2 作用効果

(一´) 乾電池E二個を電池ケース1´に入れてスライドスイツチ7´を操作すると、乾電池Eと電球とが電気的に接続されているので、ランプを点滅することができる。

(二´) 脚片8´・8´と座体9´とが軟質塩化ビニールで作られていて弾力があり、帯バンド4´でステム突出し杆HNを縛着し係止金具で係止すると、電池ケース1´は、ハンドルHの二箇所とステム突出し杆HN部の一箇所との計三箇所で接当されて取着状態が安定し、かつ、自転車が走行中に振動しても、軟質塩化ビニールの弾力によつて帯バンド4´の縛着が緩むことがなく取着状態が安定に保持され、係止金具16を緩めて着脱することができる。

(三´) 自転車用ヘツドランプがハンドルHとステム突出し杆HN部に縛着されているので、自転車の走行中でもランプの点滅操作を、手もとに近いところですることができる。

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